童話「白雪姫」

収録潜入レポート・GF団K(仮称)さん

皆様はじめまして。
日々誰の得にもならない日記を書き連ねるだけの駄生を過ごしているK(仮称)と申します。

この度、故あって『世界めいわく劇場・白雪姫』のアフレコに立ち合わせて頂きました。
簡素……というには冗長であるのは否めませんが、その際のレポートをお送り致しますので、よろしければ時間のある方はお茶やら酒やらをお供にお読み頂ければ幸いです。




「ようオマエ、アフレコに立ち合わせてやるからレポート書かせてやってもいいぞ……いや、書け!」

物凄く悪意のある意訳ですが、CLIC CLACのダダさんからこのようなお誘いをいただいたのが事の発端。

正直、最初はどうしようか迷いました。
普段から文章を書き殴る生活をしているとはいえ、それは全て自分の中で完結するだけの人様に提供するようなものではないもので。
まあ言ってみればガラじゃねえ、ってことですね。
そんな気持ちもあり「いやいや、最近はちょっと忙しいもので。主にキャピタルウェイストランドの冒険で」
等と最低レベルの理由をつけて丁重に辞退しようかという考えも一瞬浮かぶも、普段から日陰でダンゴムシのような生活をしてる身に光を当ててくれた人に対して失礼ではないかと、そしてナチュラルボーンオタクである身としては普通に生きる分にはまず体験できない、アフレコを間近で聞くというレアイベントを逃していいものかと考えた結果微力ではありますが、引き受けさせていただいた次第。

そんなわけで潜入レポートですよ、潜入レポート。
潜入レポートといえば、最近ではアイゼンファウストのなめだるま親分潜入レポートが記憶に新しいですが俺も手篭めの手伝いをしたり、おっさんに尺八されて悶えたりしてれば万事OKなのでありましょうか。
どこに潜入する気ですか貴様。

なお、今回の収録に臨まれるのは、マリみての江利子さま、苺ましまろの伸恵、クイーンズブレイドのシズカ等を演じられている生天目仁美さん、そしてマリみての令さま、とある魔術の禁書目録の神裂火織、アマガミの森島先輩等を演じられている伊藤静さんのお2人。
どちらもアニメ、ゲームで大変馴染みのある実力派の方々ですし、多くの作品で競演されていることもあり、掛け合いが中心となるドラマCDではトマトとモッツァレラチーズの如く、互いを引き立てあうような光景が期待出来ましょう。
それを聞きつつ我々もウォークライ出来ることでありましょう。




そして6月の半ば、埼玉県は某市にてダダさんをはじめとする製作者の方々、そして毎回アフレコレポートの漫画を描かれているGUNPさん方と合流し、スタジオへ。

スタジオはマンション一室をカスタムしたような、なんともパンキッシュな場所でありました。
コンパクトながらも本格的な機材や、関連CD、関連本が詰め込まれた部屋は歴戦の勇士を思わせる風格。
きっとここで色々な作品が生まれたことでしょう。ドラマCDとか、ボーカルCDとか。
あとエロいのとか。この壁か、この壁にエロい音声が吸い込まれていたのか……!

聞いた話では、これまでのCD、人魚姫やマッチ売りの少女もここで録っているらしく、スタジオのエンジニアさんとサークルの方々の打ち合わせも非常にスムーズ。
少なくとも今日が初の顔合わせである俺が意見を挟む余地はミクロン単位でありません。
せいぜい言えたところで「これ、もっとクエン酸入れたらどうっすか?」程度であり、まったく意味がねえ。
そもそもどうやって入れるというのか。CDに塗りこむとか。
肉体疲労時に役立つドラマCD。さあ、舐めれ。なんて画期的! 誰が得するんだそれ。

実はもうこの時、生天目さんはスタジオ入りしており、アフレコブースで瞑想中。
もとい台本の精読中でした。

本来ならばここで俺などが突撃取材を敢行し、レポートに色を添えるのが筋というものですがいかんせんワタクシ大変なコミュニケーション不全の身でありまして。
いやね、3Dポリゴンのアイドル相手ならば、言葉巧みに、そして過度なスキンシップを駆使してパーフェクトなコミュニケーションを連発する鉄人である俺ですが、現実世界ではバッドどころかテリブルコミュニケーションを連発する、社会不適合者ゆえ自重に自重を重ねる必要があるわけですよ。
下手打って収録がお流れにでもなろうものなら、臓器の一つや二つですむ筈がありませんし……。

真面目な話、クレイモア対人地雷のほうがよっぽど対人能力に長けてますよ。
対人のベクトルがまったく違う気もしますが。
もうね、ギリースーツ着て潜んでるだけでいいんじゃないかと。
完全スニーキング状態でのレポートもオツなもんじゃないのかと。
なので、明るく楽しいレポートはGUNPさんに全て委ねました! 餅は餅屋ってね!

………と言いたいところですが、そんなことを言ってちゃあ何も始まらねえ!
失礼にならない程度に踏み込み、生声優さんを間近にしたオタクのはしゃぎっぷりを痛々しく、そしてライブ感全開に存分にしたためてやろうじゃねえか! それが俺がいる意味、むしろ生きる意味!

そんな葛藤と決意をしているうちにピンポンの音が! これは伊藤静さんの到着! これで役者が揃った!



ここから声優に会えて喜びが有頂天なオタクがはしゃぎまくる展開になります! ご注意下さい!





ごめんやっぱ無理。

だってほら! ヘンにはしゃぎまくって収録台無しにしたら俺戦犯じゃないですか! 東京裁判確定ですよアヒャア!
むしろ結果ありきの魔女神判。 全身タッチパネルと化した俺が、ふでペン→ボールペンで攻められまくりですよ。
「ひゃあ! わたし魔女じゃありません~! んんんっ!(ビクビクッ)」と言うしか出来ませんよ俺。
また懐かしいネタですねそれというか、そもそも男だから魔女にはなれぬ現実。
パンツじゃないから恥ずかしくないもん! とか言ったところで貴様のその姿は不快にも程があると言われて終了ですよ。

何の話でしたっけ。

そうそう、収録レポートですよ。
まあ、そんなワケで、戦犯になることを恐れた俺は無難に挨拶し、事の推移を見守るモードに移行と相成りました。

全員揃ったということで、生天目さん、伊藤さんも交えての最終打ち合わせ。
ここでも俺は見守るモードという名のスニーキング状態。
むしろステルスと言っても過言ではない。俺も積極的にステルスモモと名乗っていきたい。
そしてやたらに男前な先輩に見出されてラブりてえ。主にステルス能力を駆使したまったく新しい方法で。
現実的には誰にも省みられることなく生涯を終えるか、キャプテンに愛されない設定の池田ァ!で終わりそうですが。

話がまた逸れましたが、そんな状態で口を出せることといったら、せいぜいが「これ、もっと乳酸入れたらどうっすか?」 
またそれか。どうでもいいけど疲れそうですねそれ。乳酸なだけに。




話は逸れますが、今回の題材は白雪姫ということで、この収録にあたり、白雪姫を読み返してみたのですよ。
大体の流れは覚えていますが、結末や各イベントの詳細は大分忘れていたので。
それでまあ読んでみて驚くことが多いこと多いこと。特に結末。

せいぜい王妃を追放するなり逮捕監禁するなりでめでたしめでたしだと記憶していたのですが実態は焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされるというハードコアすぎる結末。
拳王様に忠誠を誓わなかった者の末路ですかそれ。王子様は拳王様ですか。
しかもそれを行ったのは王子と白雪姫の結婚式という晴れ舞台。なんたる超いやがらせ。
いつから白雪姫の世界はメルヘンからヒャッハーが跋扈する世紀末へと変貌しましたか。

まあ、もしかしたら王子も白雪姫も王妃を許そうとしたのかもしれません。
心から反省したのならば、今までのことはチャラにするわ、って。
ただその方法に問題があっただけで。

    r'ニニ7      本当にすまないという気持ちで…
     fトロ,ロ!___       胸がいっぱいなら…!
 ハ´ ̄ヘこ/  ハ
/  〉  |少  / |      どこであれ土下座ができる…!
\ \    /| |
 ┌―)))――)))‐―┐      たとえそれが…
  ヽ ̄工二二丁 ̄
   〉 ヽ工工/ ;′∬     肉焦がし… 骨焼く…
  lヽ三三三∫三三\;'
  h.ヽ三∬三三';.三三\';∫   鉄板の上でもっ………!
  └ヽ ヽ三,;'三三∬三;'三\'"
    ヽ |__|烝烝烝烝烝烝|__|
      lj_」ー――――‐U_」

童話黙示録・白雪姫の始まりである。

それ以外にも、王妃様は白雪姫の心臓or肝臓(実はイノシシの物)を食うカニバリストだわ、罪状は毒リンゴでの殺害のみかと思いきや、その前に白雪姫を絞殺してるわ、王子様も王子様で「死体でもいいから嫁にする!」などと息巻くネクロフィリアだわ本当に恐ろしいですよ。
OH! テリブルグリム童話ですよ。このイカれた時代へようこそですよ。なんたるTOUGT BOYか(王子様が)

そんな白雪姫がこのドラマCDでどう生まれ変わるのかは聞いてのお楽しみとしか言えませんが、ストライクウィッチーズばりの「男なんていらねぇんだよ!」的世界観はとても素晴らしいと思います。
生物学的には破滅の一途を辿りそうですが。




さて、そうこうしているうちに打ち合わせも終わり、いよいよ収録へ。
配役は生天目さん=お后様、魔法の鏡 伊藤さん=白雪姫、7人の小人……ではなく美少女たち。
アフレコブースへと消える生天目さんと伊藤さんを見つめる我々にもちょっと緊張が走ります。

お2人はもうベテランと言っても過言ではないキャリアがあるし、冒頭にも書いたように古くは月姫やマリみて、webラジオ、最近ではハヤテやシャナ等々、数々の作品で競演を重ねてきた間柄、何を心配することがあろうかと思うところですが、それであってもどうなるのかという期待と不安は付きまとうもの。

どのようになるのか、一堂息を呑む中、第一声が放たれた!

お后様「(鼻歌)……これでよし、っと」

ナルシスト入ったオトナの女性ボイス! 鼻歌部分のノリもまったく問題ない。初っ端から見事なものです。
ああ大丈夫だ、と我々の緊張の糸もほぐれる演技であり、これならば一安心 と思ったところに思わぬ伏兵……いや、この収録における2大サプライズのひとつが我々に襲い掛かかった!

鏡「ハイ、お后さま」

この一言! たった一言でこの場の空気が変わった! 笑いつつも驚愕せざるを得ない瞬間だった!

文字で見るとなんでもない台詞なんですよねコレ。
白雪姫における最大の戦犯といっても過言ではない魔法の鏡が発した台詞なのですが、その声がなんというか、予想とぜんぜん違ったというか、ひどい鼻声というか、マスコットキャラ的というか、筆舌に尽くしがたい演技であり、我々一同、文字通り言葉を失い、次の瞬間に喚声ですよウォークライですよ。
むしろ嬌声と言っても過言ではない。クラウザーさんにレイプされるが如しですよ。俺達、女の顔になってたな……。
いや本当、演技の切り替えで場の空気を支配する……声優さんマジパネェ。

この場はもう鏡によって支配された空間といっても過言ではなかった。もう鏡なんていえない。鏡さんや!
この空気を打破できるか白雪姫と7人の小人……じゃなかった美少女たち!


結論から言えば出来た、出来たのだ! 打破というよりは相殺といった感じではありましたが、出来たのだ!

白雪姫の奔放かつレディキラーな演技も素晴らしいものがありましたが、美少女たちの演じ分けがとにかく凄かった。
子供っぽいのもいれば、元気一杯のもいる、色っぽいのもいれば、礼儀正しいのもいる。
それらを全て演じ分け。それぞれキャラが設定されてるのだから当然と言えば当然なのですが、それでも実際に
目の前で演じ分けているのを耳にすると驚く以外の選択肢は存在せず。
確かに打ち合わせ時に伊藤さんは仰っていました「演技プランを1から7まで考えてきた」と。
Gears of Warで例えれば「おい、プランBはなんだ?」「ああ? Gまであるぞ」「なにそれこわい」といった具合ですか。

そんな序盤からインパクト大のイベントが発生するも、収録はまだまだ続きます。
この序盤以降も台詞の改変、ニュアンスの独自解釈、台本にない台詞の追加等々のアドリブ合戦が展開されるなど、全く飽きさせない展開が目白押し。声の力って凄いモンです、ホント。

この収録の中でつくづく思いましたが、本当にこの2人の息の合い具合は凄い。
片方がノってみせれば負けじとノり返し、アドリブやればアドリブで返し。
阿吽の呼吸、打てば響く、そんな形容が相応しいにも程があります。
もはや熟年夫婦と言っても過言ではないコンビなだけあると痛感ですよ。
まさに一心同体、二刀を構えた金剛力士のようである。いやそのシグルイ的例えはいかがなものか。

そして一旦勢いづいてしまうともう早い早い。
時折行き過ぎたアドリブ等でリテイクが発生することはあれど、基本的にはノンストップ。
次々にめくられる台本、どんどん貯まっていくトラック、いかんともしがたい光景であった。

時間にして約一時間半程度だったでしょうか、めでたく収録完了! お疲れ様でした!
それほど尺の長いドラマではなかったとはいえ、テストテイクを含めて一時間半程度で終わったのは凄いものです。
確か5時間確保してあったはずですが、3分の1程度で済むという快挙。素晴らしい。

そうそう、この収録の中でもうひとつ触れておきたいことが。
7人の美少女達が同時にひとつの台詞を発するシーンがいくつかあるのですが、そこの収録が圧巻の一言でした。
まず最初にべースとなる美少女1の台詞を録り、その後、その声に被せるように美少女2を録りそこにまた重ねていくという手法をとるのですが、本っ当にキャラの演じ分けが出来てるのですね。
バラバラで聞いていたときも凄いと思いましたが、こうして重ねていくと差異が明確になって、より凄いという印象。
頭の中でキャラを分けていても、それを実際に声で分けられるところに声優というジョブの底力を見た。

や、本当にこの一連の流れは、あの場だけに留めておくのが本当に惜しい。
出来ることならばメイキングと称して音声だけでも公開してほしいぐらいのシロモノですよ。

ところで、この美少女たちって年齢設定が「8~25歳」とあるのですが、25歳は『美少女』でセーフですか。
魔法少女も19歳がギリセーフだった記憶があるので。




いや本当に驚きと笑いの絶えない収録でした。あの時間は眼福ならぬ耳福といったところでしょうか。
その後のインタビューでもお2人の夫婦漫才っぷりが如何なく発揮されていて、これまた耳福そして眼福。

あとはこれを手に取り、聞いて頂く方が笑顔になってくれれば最高の結末を迎えることが出来ますので、皆様よろしくお願いいたします!

たくさん売れれば銭的にも嬉しいしな!(そういうことは黙ってなさい)


》「白雪姫」
》K(仮称)さんのサイト「GF団」


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